2011年2月19日土曜日

カルフォルニア州のキャップ&トレード最新動向①

California’s Cap & Trade: latest movement 1
カルフォルニア州のキャップ&トレード最新動向①

「来年からの排出権取引制度導入に伴う法的課題 」

カリフォルニア州では、2012年よりキャップ&トレード型排出権取引制度(排出の規制対象となる企業などに排出量の上限を設定した排出枠が割り当てられ(キャップ)、この排出枠の一部を取引(トレード)することが認められる)の導入が始まる予定です。制度は2020年までにカルフォルニア州の85%の温室効果ガスをカバーし、対象となる施設は約600施設になるとされています。また、初めは排出枠の大部分が無料で与えられますが、段階的にオークション制(オークションによって有償で排出枠を配分する方式)へ移行することが計画されています。

先月行われたスタンフォード大学のEnergy Seminarでは、法学部のMichael Wara准教授がキャップ&トレード導入における現在の法律上の課題を指摘していました。その課題とは、1)Proposition 26に関する問題、2)州外からの電力に対する規制の問題、3)連邦政府管轄の法律との調整、です。

昨年11月の選挙にて可決されたProposition 26では、州政府の収入を増やすような制度上の課金は税金とみなし、導入に際して議会の3分の2以上の賛成を必要とすることが定められています。Proposition 26により、もし排出権の購入が税金と捉えられた場合、その導入には議会の3分の2以上の賛成が必要になるということです。オークション制の導入などは、特に難航する可能性があります。

二つ目の課題は、州外にて発電された電力をどのように扱うか、という点です。カリフォルニア州は、電力の約30%を州外からインポートしています。カリフォルニア州のベースロード電力には、州外からの石炭火力発電が多く使われていることもあり、そういった電力に対してどこまで規制の影響が及ぶのか、については議論があります。

三つ目は、州と連邦政府の狭間の問題です。連邦政府のEPA (Environmental Protection Agency ) はClean Air Actという法律によって温室効果ガスを規制しようとしており、その法律との兼ね合いも考慮に入れる必要があります。また、セメント、重工業などの産業に関する法律は連邦政府が管轄しており、連邦政府の法律が州政府の法律より優先されることになっているため、調整が必要となります。

カリフォルニア州のキャップ&トレード制度は、アメリカ及びカナダにおける幾つかの州と連携し(Western Climate Initiative)、地域における排出権取引市場として発展していく見込みです。

上記の課題は法廷にて議論されることになりますが、どのような判断がくだされるか、は今後他州が同様な制度を導入する際の前例として重要になっていくでしょう。

これからの議論を見守りたいところです。

http://energyseminar.stanford.edu/node/319