2011年6月22日水曜日

6/10 東京大学での講演サマリー


先日6月10日に、東京大学にて講演を行いました。テーマは「イノベーションを支えるエネルギー政策、その実態と課題」です(詳細はこちら)。お越し頂いた皆様、ありがとうございました。お越しになれなかった方で内容にご興味を持って頂いた方も多かったので、以下に要約を載せます。

講演内容のサマリー:

シリコンバレーを中心とするカリフォルニア州にて、クリーンテック関連のベンチャー投資が進んでいます。2010年の実績では、米国全体のクリーンテック関連ベンチャー投資のうち、70%はカリフォルニア州に集中しており、世界で見ても約50%を占めています。

カリフォルニア州は全米でダントツの太陽光発電の導入量を誇り、また省エネランキングも4年連続で1位を獲得しています。 デマンド・レスポンスも進んでいます。

その理由として、先進的なエネルギー政策の存在が挙げられます。まず、様々な奨励金(リベート)やプログラムの存在があります。セミナーでは、直接的に影響している施策として、太陽光発電関連、分散型発電、省エネプログラムへの各種リベート/プログラムについて紹介しました。

さらに、それらのプログラムを支える政策について話しました。まずは、電力会社の売上と利益を分離するデカップリング制度についてです。1982年に全米で最初に導入されたデカップリング制度の効果として、ここ30年間の米国の1人当たりの電力売上高の平均が右肩上がりなのに対し、カリフォルニア州の1人当たり電力売上高は横ばいとなっていることを紹介しました。

加えて、更なる省エネを推進するためのRisk Reward Incentive Mechanismについて紹介しました 。電力会社は3年を1サイクルとして削減目標量を設定、その達成度合いによって利益を得ます。セミナーでは、RRIMの課題についても取り上げました。更に、省エネやデマンド・レスポンスを発電所の増設より優先して考えることを示したEnergy Action PlanやLong-term Energy Efficiency Strategic Planについてもお話ししました。また、投資家にお墨付きを与える重要な政策として、キャプアンドトレードや2020年までに再生可能エネルギーを33%とすることを定めたAB32があります。

オバマ大統領の政策とも、相互に関連しています。例として交通分野を挙げました。 電気自動車のインフラ整備が全米で最も進んでいるカリフォルニアの取り組みと連邦政府主導のclean city initiativeの関連について取り上げました。

最後に最も大きな課題として、カリフォルニアの財政問題、失業率、産業構造の変化の問題について述べ、それに対する住民の姿勢や州政府のサポートについて話しました。

日本では、カリフォルニアのエネルギー政策と言うと、2000年・2001年の電力危機のことばかりが取り沙汰され、失敗とみなされていることが多いです。しかし、現在はもう2011年であり、この10年の間にカリフォルニアのエネルギー政策は様々な工夫を重ねてきています。各種の政策は、賛否両論がありながらも実行に移され、その結果を基に修正されて進化しており、エネルギー関連のスタートアップ企業を多く生み出す土台として機能しています。カリフォルニアの試みから、学べることは多いと思います。

配布資料:
ディスカッションペーパー