前回の投稿から、大分時間が空いてしまいました。2012年はコンサルティングのプロジェクトが切れ間なく入り、息をつく間があまりない1年間となっております。
さて本日は、2012年3月に著者が北欧のスマートシティ(コペンハーゲン・アムステルダム・マルメ)を視察した際に見て参りました、デンマークでのスマートグリッド実証実験のうちの一つについて、書いてみたいと思います。
デンマークは、2050年までに自国のエネルギーの100%を再生可能エネルギーで賄うことを目標としています。スマートグリッドへの投資も盛んで、ヨーロッパにおけるスマートグリッドプロジェクトのうち22%はデンマークで行われています。様々なスマートグリッド・プロジェクトが進んでいますが、他国と比べるとやはり再生可能エネルギー導入に役立てるという目的が色濃いのが特徴的で、特に風力発電を最大限に活用するためのスマートグリッド実験が進んでいます。
PowerLabDKの概要は、下図の通りです。
出典:http://www.powerlab.dk/upload/sites/powerlabdk/media/the_bornholm_power_system_an_overview_v2.pdf
ボーンホルム島での実際の電力データと研究所における実験用システム・機器のデータを合わせて用いることで、リアルタイムでの電力システムのシミュレーションを行っているのです。SCADAシステムの配置されたコントロール・ルームにおいて全てのシステムを監視・制御しています。
DTUのコントロールセンター(以下、写真は全て筆者撮影)
DTUのリアルタイム・シミュレーター
実験の一つに、電力需要の増減を周波数制御に活用するための実験があります。周波数制御の機能のついた電気製品(ボトルクーラーや電気ヒーターなど)を200個導入し、実証実験が進められています。写真は、小型の周波数制御器のついたボトルクーラーです。デンマークでは、周波数制御サービスの市場価格はWestern Denmark (DK1) では年間、MWあたり8000ユーロ、Eastern Denmark (DK2)では年間MWあたり20000ユーロです。周波数制御装置は1つ20ユーロなので、1kwの消費電力の電気製品であれば、計算上は1年又は2年半で元が取れることになります。
また、PowerLabDKの一部として、DTUのRisø研究所では、自前の小型電力網を用いて、風力タービン、PV、ディーゼル発電機、蓄電池、オフィスビル、プラグインハイブリッド車、電気自動車、充電インフラ等を統合的にマネージするスマートグリッド実験が行われています。
緑色の線は風力の発電量、茶色の線は太陽光の発電量、赤の線はFlexhouseと呼ばれる小型オフィスビルでの需要、灰色の線は蓄電池への充電、青の線は系統への供給量を示しています。風力の発電のブレに合わせて、少し遅れて蓄電池への充電が行われていることが、見て取れます。
以前視察したEPRIのスマートグリッドラボ(こちらも多岐にわたるスマートグリッド実験が行われていて興味深い)や、アムステルダム市・マルメ市の様子についても、また機会があれば書いてみたいと思います。
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